The Venturesome Economyという本を読む。
この本は、コロンビア大学の教授が、VC出資を受けたベンチャー企業について調査したもので、「How Innovation Sustains Prosperity in a More Connected World 」、平たく言うと、世界がつながっていくなかで、米国経済がどうイノベーションを推進していくか、について議論されている。
BusinessWeek誌の「Best innovation&Design Books of 2008」に選出された本である。
Venturesomeとは、「大胆な、冒険的好きな」という意味で、本の中で定義付けられているVenturesome economyやVenturesome consumptionという言葉は、供給者側である、製品やサービスの作り手ではなく、需要者側のユーザ(企業も含む)や消費者が、アーリーアダプターとなり、実験的・冒険的なリスクをとることによって、イノベーションが生まれていく、という考え方のようだ。
大まかな主張は、以下のようなものである。
・米国(先進国経済)のイノベーションは、先進的・冒険的なユーザ(消費者、企業)主導で生まれる。
・米国(先進国経済)のイノベーションの推進には、自国の研究開発力ではなく、自国の先進的・冒険的ユーザの存在が大きい。
最先端の研究開発は、インド、中国含め、どこからでも生まれてくる。イノベーションを活性化させる為に、自国での最先端の研究開発にこだわるのではなく、世界中から生まれる優れた技術を取り入れ、先進国経済に多く存在する先進的・冒険的なユーザの力と共に新しい製品・サービスを作り出すことだ。
この本がベンチャーキャピタリスト(VC)やハイテクベンチャーの経営者にとって面白いのは、イノベーションの調査対象をVCから出資を受けたハイテク企業としており、多くのコラムが入っているからである。
いくつか、本の主要テーマと重なるポイントを挙げる。
・ベンチャー企業は技術開発型であるが、大企業の研究開発程のようなハイレベルな技術・ノウハウを産み出していない。それらのハイレベルな技術・ノウハウを活用し、ミッドレベルのノウハウ・製品を作り出すことで、イノベーションを生み出す。
・海外展開するベンチャー企業は割合としては少ない。多くは、国内市場のアーリーアダプター向けの製品を作り、一定規模まで拡大する。
・ベンチャー企業の創業者における移民の役割の比率が上がってきている。特にCTOの移民の比率は上がっている。経営陣内の役割や住み分け、米国と中国・インド等間の開発の役割、住み分けが生まれる。
一般的にはイノベーションの推進、競争力の強化というと、研究開発費への投資や助成、科学者やPhD取得者数、特許取得数、といったことに力を入れるべき、という話になるが、本書は違った角度から、イノベーションの推進を議論していて面白い。日本市場でも参考になる考え方だろう。
気になるところとしては、本書の米国のハイテクベンチャーは、消費者だけでなく、企業もユーザとしてイノベーションを推進する担い手として認識されている(例えば、ウォルマートのようなサービスセクターの大企業がハイテクベンチャーの製品を利用する)ようだが、
日本では、大企業がイノベーションのパートナーとして、日本のベンチャー企業とWin-Winの関係となっていることは少ないだろう(逆に、シリコンバレーのベンチャーとWin-Winになる日本の大企業は存在する)。
ここが変わると日本のベンチャー市場のパイは大きくなると思われる。
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